事業成果物名

20年度港内航行管制基準の改定に関する調査

団体名

事業成果物概要

 海上輸送の運航効率を追及した国際競争の中で、急速な船型の大型化や船舶の操船性能の向上と諸元の変化、航海計器の充実等を踏まえ、安全性を確保しつつ運航効率を向上させるための方策について交通管理の面から検討し、AISを活用した管制手法及び管制基準の見直し等について提言した。

AISを活用した港内管制の導入に当たっては、港内交通の安全確保を前提に、定量的な効率性の向上も踏まえて海事関係者等の同意を得つつ進めることが必要なことから、今年度調査では、行き会い船型の目安を求める算定式の定量的な見直し及び定量的な便益効果についても検討した。

また、想定対象船型を上回る船舶の入港等に際して、周囲の航行環境に対する影響を緩和する航行安全対策の検討に関して、共通的な検討手法を求める声もあることから、影響調査や航行安全対策等の検討の標準化を図り、評価対象、評価内容、評価手法、評価指標等に関する「安全対策評価ガイドライン」を策定した。

管制水路内での管制船・管制対象船の行き会い船型の目安を求める算定式は、昭和47年度の「海上航行安全システム等に関する調査研究」で検討・取り纏められたが、当時と現在では船舶の諸元・操縦性能等もかなり異なっており、管制基準の見直しに当たっては操船シミュレータ実験などの様々な検討を行った。自動車専用船など水面上の構造が大きく嵩高な船舶では、様々な条件下でより多くの操船実務者の評価を取り入れる必要性が謳われたが、当面、現行の目安の算定式で求められる行き会い船型の大きさは、概ね安全上妥当であることが分かった。

管制対象基準は、船舶の“総トン数”から“長さ”へ変更し、管制水路では原則通航船舶の長さに応じた行き会い管制を行うことが提言され、モデル港で試算・検討した結果では、入航のタイミングに係る制約の解消、輸送時間の短縮化、ひいては船舶の運航に必要な燃料費等、輸送コストの低減や輸送貨物の時間費用の減少などの経済効果が期待できることも分かった。

しかしながら、AISを活用した新たな港内管制の導入により、これまでの一律管制よりも管制船と管制対象船の行き会い制限が緩和される部分で、潜在的な危険度が高まるといった警鐘的な意見もあることから、導入に当たっては各港ごとの船舶交通の輻輳状況や管制水路の形状等の特性を踏まえ、AISを活用した具体的な港内管制・運用方法等について十分検討することが必要不可欠である。

更に、一般的に昼間に比べて操船が難しいといわれる夜間については、昼間の運用実績を積み重ねて導入を検討することが肝要である。
なお、この結果を踏まえて法令改正が行われる予定である。

また本調査では、これまで検討された航行安全評価事例を体系的に集約し、類型化して「安全対策評価のガイドライン」として取りまとめ提案したが、あくまでも現実のケースにおいては、個々のケースで調査対象や航行環境、調査レベル等も異なることから、本ガイドラインを参考として、関係者間で協議・調整されて決定されることが肝要である。

助成機関

  • 日本財団

事業成果物種類

報告書

事業成果物

事業成果物名

港内航行管制基準の改定に関する調査研究

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